うつは甘えという言葉
「うつは甘え」という言葉をよく聞くと思う。この精神論は、うつ病の原因をその人に求める考え方だといえる。
私は、この言葉は呪いだと思っている。
実際に私がうつ病に罹患して感じたのは、うつ病は精神論の範疇に留めておけない、非常に厄介な病だということだ。
言い換えるなら、一過性の脳機能低下という、身体と精神の双方を蝕む病だと言える。
どれくらい辛いかと言うと、二日連続で徹夜した後の夜が永劫に続く感じ。
これまでできたことが段々とできなくなっていくのである。
うつ病が生じる背景として、本人の気質や伝達物質不足なども指摘されてきたが、恐怖が持続的に与えられることで扁桃体が過剰な反応を示し、客観性や理性を司る前頭前野の働きを低下させるというメカニズムも提唱されている。
要するに、患者さんが自身の力で乗り越えられないほどの恐怖体験の積み重ねが、うつ病のトリガーになっている可能性が示唆されている。
そのため、もしも「うつは甘え」という言葉を用いる人がいるなら、うつ病のトリガーとなった恐怖体験を肯定し、判断力の鈍った人に「これくらいのことに抵抗できなくてどうする」と蔑んでいると言えるだろう。
ポケモンで例えるならば、HPを使い果たしたポケモンに「体力がなくてどうする」と叱咤しているようなものである。
その前にアイテムで補給したり、相性を考えたり、進化させたりする必要があるのに、ポケモンだけに原因を求めるのはお門違いだと思わないだろうか。
うつ病における多重的な原因を考えられるような社会が醸成されることを願ってやまない。